古賀歯科医院　休診予定などのお知らせ

当院の休診や歯科医師の不在情報、歯科に関する意見や参加した勉強会の報告などについて書いています。ちなみに嫌いな言葉は『with コロナ』とか『コロナと共存』というスローガン。

医療崩壊

COVID-19

東京都医師会だか日本医師会の会長が、医療崩壊が始まった…と言われましたが、実は年末には既に始まっていましたよね。現在は、ようやくそれが素人目にもわかるようになってきただけの話で、それはつまり医療崩壊の始まりではなく真っ只中であることを示しています。

コロナに関しては意見や予想、対策など書きたいことが山ほどあり過ぎて結局何も書けないままですが、今回は医療崩壊についてだけ書かせてもらいます。

未だに医療崩壊の意味がよく分かっていない方がおられます。『医療崩壊』が、このコロナ禍が始まってからよく使われるようになった言葉なので、コロナに関してだけ医療が崩壊する、コロナの治療がロクに出来なくなるだけのことで、自分とは関係ないと高をくくっている人の多いこと多いこと。多少ニュースなどをよく視聴すれば詳しく説明がされているのに、中途半端にしか理解しないで分かったつもりでいる人が、こういう誤解をしているようです。

だから、ここで私が何を書いても斜め読みしかせずに本質的なことが分からないのかもしれませんが、それでも書いておきます。

 

例えば、あなたが交通事故に遭ったとします。幸い簡単な骨折程度で済んだとします。意識もはっきりしています。少なくとも命に別状はなさそうです。

救急車を呼ぶことになりました。しかし、呼んだ救急車はコロナ患者を搬送中で、そのコロナ患者を受け入れられる病院もどこも満床で見つからず、その救急車はコロナ患者を乗せたまま待機中です。どの病院も満床で、人手も足りず、受け入れられないのに、コロナ患者は増えていくばかりですから、待機中の救急車は一台ではありません。多くの救急車が同じ状況です。運よく受け入れ先が見つかっても、コロナ患者を乗せた救急車はしっかりと消毒などを施す必要があり、やはりすぐにはあなたを迎えに行けません。

そうこうしている内に、軽い骨折で済んでいるとはいえ何も手当てをしていないのですから、そろそろあなたは痛みに耐えかねて気が狂いそうなくらいに悶えています。でも、だれも悪くはないのです。この殺伐とした現在の日本で、誰が悪いのかとなると、きっとこんな状況で車を運転していたあなたが悪いということにすらなりかねません。

それでも救急車はやってきてくれ、あなたを病院に搬送してくれることになりました。しかし、あなたを受け入れてくれる病院はありません。いや、受け入れられる病院がありません。ならば個人でやっている外科診療所ではどうかなどと甘い期待をしてはいけません。今日日、医療はかなりの分業化が進み、手術を個人でやってくれる医師などなかなか見つかるものではありません。

かくしてあなたは、痛み止めで何とか痛みを抑えるしか手立てがなく、骨折の手術を受けてくれる病院が見つかって実際に手術を受けるまでには結構な時間が経ってしまい、運が悪ければ骨が折れて形が変わった状態で治ってしまい、本来なら単に骨を接ぐだけの手術で済むはずのものが、整形手術まで兼ねた手術を受けなくてはならなくなってしまいます。事故に遭っただけでもひどいことなのに、お金も時間も余計にかかってしまうわけです。

これが重症の交通事故であれば、もっと深刻な状況に陥るわけです。

 

現時点でもこのくらいの想定はしておいた方がいいくらいの医療崩壊が起きているかもしれないのに、これがもっと悪化すると、“ものもらい”の治療が受けられない～目が見えない！、ぎっくり腰の治療が受けられない～寝たきりになってしまった！、妻が急に産気づいた～まともな分娩が受けられない！あなたの大事なまだ見ぬお子さんは無事でいられるか？、持病の喘息の発作が始まった～呼吸困難の状態でどれだけ持ちこたえられるか！、心筋梗塞を起こしてしまった～etc...というようなことがザラに起きてしまうのです。

つまり、『あなたとあなたの大事な人の為に』…というのはコロナに感染しないようにというだけではなく、普段なら病院にかかれば何てことないような簡単な病気や怪我でも、このような医療崩壊を起こした現状では、命を失いかねなかったり、死ぬような目に遭う可能性もあるため、少しでも医療資源（あなた達を診てくれる医療者や医薬品・医療機器、ベッドなど）を確保しておきましょう、それが医療崩壊を防ぐ（今となっては防ぎきれなかったので、医療体制を回復させるという表現が適当かもしれません）ということなのです。

 

以上、ざっと一気に書いてしまいました。それでも、「医療崩壊を起こしているのは分かった。でも、それはコロナ患者を受け入れている病院だけの話だろ？」と言う人がいるのは残念です。

確かに現時点ではそうですが、現在のコロナ患者増加傾向が進めば診療所も無傷で済むわけはないでしょう。働いている所が病院であれ、診療所であれ、お医者さんはお医者さんですから、現在でさえ看護科の大学院生や教職員に現場で働く要請がなされているのですから、診療所で働いている現役の医師や看護師が安穏ともしていられないと考えるのが普通ではないでしょうか。

なお、歯科の場合は経営面や精神面ではコロナ禍の影響で厳しいものは確かにありますが、医療崩壊とはまた別問題です。つまり、歯科では医療崩壊は起きないと言えます。

話が逸れてしまいましたが、要は医療崩壊というのは誰もにしわ寄せが行く可能性が十分にあるということです。たとえ新型コロナ感染症に感染しなかったとしても、何らかの影響を受ける可能性があり、場合によっては人命にかかわることもあり得るのです。だからこそ、コロナ感染症に感染しないように重々注意することは、自分自身の健康や命をCOVID-19から守るだけでなく、自分の大事な人たちの健康や命を守ることにもつながり、また巡り巡って気が付かないうちにもやはり自分自身を守る事にもつながっているということなのです。