古賀歯科医院 休診予定などのお知らせ

当院の休診や歯科医師の不在情報、歯科に関する意見や参加した勉強会の報告などについて書いています。ちなみに嫌いな言葉は『with コロナ』とか『コロナと共存』というスローガン。

GC友の会 学術講演会

当院の歯科衛生士1名と副院長とで、『治癒力を考える 治癒力にどこまで期待するか?治癒力をどう引き出すか?』と銘打たれたGC友の会 学術講演会」(於・福岡市 エルガーラホール)に行ってきました。講師は、ごく最近まで埼玉県で診療されて、現在は東京医科歯科大学で指導医をされている内山茂先生です。
昨年も同じような講演に出席しましたが、このシリーズは机上の理屈ばかりではなく、実際にベテランの先生方が診療で培われた治療法や結果、考察などを実体験を以て話されるので大変に気に入っています。
今回も、既に知っていた話から目から鱗が落ちるような話まで盛り沢山でした。既に知っていたと書きましたが、私自身、何となくだったり、経験的にこうした方が良いのではないかと思いながら行っていたやり方が、ベテランの先生も同じような方法を執られていたり、その結果が好結果に繋がることなどを示されるわけです。今まで良いと思いつつも確信の持てなかった治療法が正しいと助言いただき、励まされるような思いでした。
今回の講演で扱われた疾病は主に歯周病で、講演のポイントは表題にあるように治療ではなく、その後のメインテナンスに関してが主でした。もちろん、メンテについて話す以上、治療の話も避けて通るわけにはいきませんから、内山先生の診断とそれぞれに対する治療法やその経過などが語られるわけですが、やはりベテランの先生と言えども試行錯誤を繰り返す場合もあるし、思わぬ発想の転換などが好結果をもたらすことなども共感でき、大変タメになると同時に自分のやってきたことは間違っていなかったとも取れる内容でした。
そして、話は治療後のメインテナンスへ。当然と言えば当然ですが、歯周病治療後のメンテにマメに通院する患者さんと、そうではない患者さんとでは、その後の残存歯数(残っている歯の数)に大きな差が出てきます。こんなことは歯科医療の有資格従事者ならだれでも学校で習っていることですし、現場でも実感していることですし、一般の人でも普通に考えればわかることです。しかし、実際に調査結果という数字で目の前に出されると、つくづくその重要性に気付かされるものです。国の違いや調査法にも多少の違いがあるのでしょうから一概に比較はできないのかもしれませんが、この講演ではアメリカと日本での調査結果のデータ比較が供覧されました。歯周病のメンテを受け続けた人(アメリカ)とそうではない人たち(日本)の30年間の変化です。前者では失った歯の数は約2本、後者では約10本でした。

さて、ここからは普段言いたくても、目の前にある治療に手いっぱいでなかなか患者さん一人一人に話せないことも多いので、この場を借りて私自身の歯周病歯周病に罹患している患者さんやその治療も含む)に対する考えを書きたいと思います。(内山先生の話などを踏まえていますが、先生の考えとは違うところもありますのでご了承ください。)


歯周病感染症です。細菌が引き起こす疾患です。しかも、むし歯と一緒で一度口の中に定着してしまうと、まず治癒してしまう…原因菌を撲滅してしまうことは実質無理です。しかし、感染すること自体は全く特別なことではなく、むしろ感染していない人を探すことの方が困難なくらいです。
では、なぜ歯周病で苦労する人とそうじゃない人がいるのかというと、一概には言えません。個人差、つまりその人それぞれの免疫力だったり、生活の違いもかなり大きく関与するからです。そういう意味では生活習慣病と同じです。
生活習慣病と言えば、例えば糖尿病だったり、高血圧症などが挙げられますが、これらの病気は一度発症すると治療はできても治癒は困難です。ですから、ほぼ一生、治療薬を内服し続けることになります。歯周病も一緒です。腫れたり出血したり、歯がぐらついたりでまずはその症状が治まるような治療を行うことになります。それは歯みがきの指導を行い、患者さん自身が歯みがきのやり方を改善するだけで『治る』場合もあるし、歯石取り、切開や外科的な処置を行ったり、歯を削ったり、抗生物質を処方したりといかにも治療という方法で『治る』こともありますし、究極の治療法としては抜歯を行う場合もあります。しかし、本当の意味で『治る』わけではありません。高血圧症が目に見えて進んでくると、体調に支障をきたして病院で受診して、血圧を下げる薬を飲むことになります。これで、血圧は落ち着き、日常の生活が送れるようになりますが、薬をやめるとすぐに血圧は上昇し、また同じことの繰り返し・・・。これって、治ったとは言えないでしょう。生活習慣病の場合、治すのではなく、症状をできるだけ減らして、その病状を安定させるだけに過ぎません。
歯周病も単に気になる症状がなくなっただけで、実際には歯周病菌は口の中にはびこっているわけで、常にこれらの細菌が悪さをしようとしているのをできるだけ阻止するのが、治療後のメインテナンスということになります。むし歯に関しても同じことが言えますが、このメインテナンスは個人個人によってカスタマイズされなくてはなりません。ある人には歯みがきだけで対処できると思われれば、その歯みがきがおろそかにならないように歯みがきのチェックのために定期的に通院してもらうべきでしょうし、歯石の付きやすい人にはできるだけ歯のクリーニングを行ったり、ちょこちょこと歯石を取ったりすべく通院してもらうことになるでしょうし、免疫力が低下しやすい病気の人にはその病気の治療をしっかり受けるように勧めたり、生活における注意点などを説明したりするために通院してもらった方が良いわけです。
具体的に一例を挙げると---
歯周病のせいで、抜いた方が良いと思われるぐらつく歯がある患者さんがいます。
私の診断は絶対に改善しないくらいに歯周病が進んでいる。抜かないと、歯周病が隣の歯にまで拡がって、1本の抜歯で済むところが、2〜3本抜歯しなくてはならなくなるかもしれない。
しかし、この患者さんはどうしても歯を抜きたくないと言う。
では、どうしたらいいのか?
しっかりと歯周病に対する治療を行い、その後、隣の歯にまで歯周病が及び始めていないか定期的に通院してもらう。通院するたびに、この部位の歯石や汚れを取ったり、歯みがきを指導したり、時には薬を使ったりする。そうすることで、「じゃぁ、もっと悪くなって、抜く気になったらまた来てください。」と言って放置しているよりも、歯の寿命は延びる可能性が高くなる。予想に反して、状態がかなり良くなる場合もありうる。そうこうしている内に、やはり病気は進んでいき、隣の歯にまで拡大してきた。
このときに、「今抜歯すれば、取り外し式の入れ歯は入れなくて済みますよ。けど、あと半年くらいで隣の歯までひどいぐらつきが出てくるでしょうから、その時に複数の歯を抜くと、入れ歯になりますよ。」などと説明するわけです。もちろん、この説明に対しての患者さんの考えで、どういう治療やメンテを行っていくかが変わってきますが。
却って話が分かりにくくなってきたかもしれないですね。つまり、私たち歯科医療従事者は患者さんの口の中の悪いところを治したり排除したりするのが務めではありますが、その一方で患者さんの希望であったり我儘もできるだけ受けなくてはならない義務もあると考えているわけです。そして、総合的に見て、専門家としてすべきことでないことは行わないし、受け入れられることはできるだけ受けるという、折り合いをつけるのが仕事だと思っています。もっと言うなら、古賀歯科医院にはそれができるスタッフがいると思っています。

乱筆乱文にて失礼いたしました。敢えて、推敲せずに、勢いで書いてしまったものをそのまま載せることにしました。